沖縄に根付いた豚肉食文化

  • コラム

琉球料理には「宮廷料理」と「庶民料理」とがあります。
そのどちらも琉球王朝時代に中継貿易国として発展していく中で、中国をはじめ東南アジアの諸外国から多くの影響を受け食文化は発展していきました。

琉球王朝時代に豚肉食が普及した直接の要因が、当時、冊封使と呼ばれる中国皇帝の使者をもてなす際に大量の豚肉が必要だったことが挙げられます。
首里王府は豚肉を常食としていた冊封使の来琉に備えるべく、各地の村々に豚の飼育を行わせることで養豚が活発になっていきました。

また、“羽地朝秀”の農業振興策で農耕に役立つ牛を食べることを一切禁止するおふれが出たため、それ以降、豚を食べる習慣が庶民にも定着していったのです。
さらには、同時期に各地で飼料として使えるサツマイモが普及したことも豚の飼育を後押しし、豚肉食文化の発展が加速していきました。

宗教などによる肉食禁止の言い伝えなどもなかったことで、お正月などの行事や催事に欠かせない食材として豚肉が沖縄の食文化の大きな柱となった。

 
 

沖縄の食文化には、中国の医食同源思想に通ずる「クスイムン(薬になるもの)」「ヌチグスイ(命の薬)」という琉球料理の神髄ともいうべき考え方が根底にある。

沖縄の先人たちは「医食同源」、つまり食べ物は滋養になるという考えのもと、地元にある材料を知り尽くし、それを使って調理し、そこから滋養性、薬効を宿した料理をつくりあげ伝統としてきました。

また、「鳴き声以外はすべて食べつくす」沖縄に根付いた豚肉食文化は、豚一頭余すことなく内臓、耳、足、血液までどこもかしこも無駄なく美味しく食べる、琉球人の知恵と発想が凝縮されているのだ。

例えば、ミミガー(豚の耳)は刺身や和え物で、テビチ(豚足)は煮物や汁にしたりと工夫して食べます。そこには豚に含まれる脂肪、ビタミンB1、ビタミンB2を余すことなく食べる知恵が詰まっています。
栄養学的にも、豚足に多く含まれるコラーゲンには、老化とともに失っていく骨と骨をつなぐ大事な栄養素。血には鉄分、カルシウムが、内臓にはビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ミネラルが多く含まれています。
この医食同源思想は、現代の沖縄の豚肉食文化にも脈々と受け継がれているのです。

 
 

私たち琉球 千年豚では、地産地消を心がけ、ここでしか味わえない食材をいつでもご提供できるように化学調味料を極力使わず、素材の旨味を大切に、体に優しく安心して食べていただけるように手づくり料理にこだわっています。

戦後、食糧不足にあえぐ沖縄を救ったのは、これまで食文化の中心を担ってきた豚。
しかし、この豚肉料理も冷凍食品や化学調味料といった新しい文明の発展と共に徐々に各家庭から昔懐かしの沖縄のが姿を消していきました。
「沖縄の大切な食文化が失われてしまわないように」時代に流されることなく正しく本物の味を伝えていきたいと考えています。

一日に三回来る「食事」という「幸せ」を安心して楽しんでいただき、また類い稀なる豚肉の食文化とそれを生み出す風土、先祖が育み残してくれた良き精神、そして豚の命に感謝して、更にお客様に喜んで頂けますよう最上のおもてなし料理をご用意してお待ちしております。